パラレル
|
人通りの無い寂しい路地で街灯もほとんど切れている。ついているモノもかろうじて。ジリジリと今にも消え入りそうな悲鳴。道の両脇には古びた民家。結構明かりのついた家もあるのに何故だか人の気配を感じない。 早足で歩く。いつもと違う道。何故だか気付いたらここを歩いていた。自宅まではもう少し。新月なのか空は真っ暗。民家の明かりだけが頼り。 そういえば自分がまだ子供の頃この辺で、級友が行方不明になった。もう名前も忘れてしまったけれど、結構仲の良い奴だった。思い出したとたん背筋が寒くなる。早くこの路地を抜けないと。 後ろに人の気配がする。凄く嫌な感じ。追い付かれたら最後だ。不思議な危機感。 人通りの無い寂しい路地で街灯もほとんど切れている。ついているモノもかろうじて。ジリジリと今にも消え入りそうな悲鳴。道の両脇には古びた民家。結構明かりのついた家もあるのに何故だか人の気配を感じない。 駅からアパートまでこの道が一番近い。通い慣れた道なのに何故か違和感。空には満月。夜ももう遅いせいか民家の明かりはほとんど消えている。月明かりだけが頼り。 昔、級友がこの辺で通り魔に刺し殺された。待ち合わせの時間に送れた自分は助かった。毎日、通る度に罪悪感。もう名前も忘れてしまったけれど、結構仲の良い奴だった。記憶しているのは赤黒い海の中に浮かんだ見た事の無い物体。 誰もいないはずなのに人の気配。少し背筋が寒くなる。 勇気を出して後ろを振り向く。誰もいない。誰もいないのに人の気配。何故か少し寂しい気持ち。 誰かの気配はするけれど何もいない。きっと猫か何かだ。少し安心する。もう少しでこの路地を抜ける。 何だかとっても寂しい気持ち。どうして自分はここにいるのかそれを考える。早足で歩きながら考える。ずっとずっと歩いているけれど今だに答えは出ない。空は真っ暗。ずっと真っ暗。明るい空を見たのはずいぶん昔のような気がする。自宅まではもう少し。行方不明になった級友はどうなったのだろう。記憶しているのは最後に約束した言葉。この路地で待ち合わせをしようと約束をした。 知らない人に声を掛けられた。それからの事は覚えていない。気付いたらここにいた。だから約束の時間に遅れてしまった。やっぱり罪悪感。空は満月。ずっと満月。月は満ち欠けすると授業で習った覚えがあるけれど。アパートまでは後少し。殺されてしまった級友はどうなったのだろう。御葬式にも行っていない。自分は呼ばれ無かったのだろうか。凄く凄く寂しい気持ち。 もうすぐ夜が開ける。(喪失感)早く自宅に帰らないと。今日こそ帰りたいのに。 もうじき朝だ。(絶望感)早くアパートに帰らないと。どうして帰れないんだろう。 夜明けと同時に二人は空気のようにふっと消えた。 |