白い天井
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見上げるとぼんやりと霞んだ白い天井。 白い廊下は地平線の彼方まで。廊下の両脇には白い扉が延々と続く。決して開かない扉達。中からはサワサワと話し声。耳を傾けても決して何を言っているのかは分からない。時々行き交う薄汚れた白い服を来た白い人達。皆一様に足取りは重く薄い作り笑顔を浮かべている。すり減った白い靴には血と膿が滲む。当然自分も例外では無くて。足取りは重く薄い笑顔。自然と笑みがこぼれて来る。 何故ここにいるのかとかここは一体どこなのかとか。自分はどこへ行こうとしているのかとか。そんな事はどうでも良くてただただ足を交互に前へ。ただここより先を目指す。 白、白、白、白、白い世界。ここ以外のどこかへ。いつか辿りつける事を夢見ながら。 長細い世界。僕らの世界。時々ふと頭をよぎる事。僕らがいつ産まれたのか。とかいつ死ぬのか。でも答える者は誰もいなくて誰も知りたいとは思わなくて。そもそも誰も知らないのだろうし。でも最近とても気になる事。もしかして皆も気にしているかもしれない事。 ただただ足を交互に前へ。ただここより先を目指す。 一体どこへ辿り着くのか。そもそも辿り着く場所が存在するのか。ぐるぐるぐるぐる頭を巡る。たまらない気持ち。胸がキキキキキと熱を帯びて来る。熱い。熱い。熱い。苦しい。苦しい。苦しい。 息が出来ない。交互に足を出す出す出す出す出す。この行為に何か意味があるのか。どうなのか。誰か答えて欲しい。誰か質問をして欲しい。誰かに質問をして欲しい。誰かとは誰か教えて欲しい。 白、白、白、白、白い世界。ここ以外のどこかへ。 いつか辿りつける事を夢見ながら。 ここから抜け出して別の場所へ。 そんな場所は無いと言う事を知っていながら。 ただただ足を交互に前へ。ただここより先を目指す。 白い廊下は地平線の彼方まで。廊下の両脇には白い扉が延々と続く。決して開かない扉達。中からはサワサワと話し声。耳を傾けても決して何を言っているのかは分からない。何も言っていないのかも知れない。僕は諦めなければいけない。永遠に続く道。 ただただ足を交互に前へ。 たまらない気持ちになって伸び切った爪で薄汚れた白い服の上から胸を力一杯掻きむしる。痛みが僕が僕である事を証明してくれる。そんな気がする。白い服に赤い染み。 白い世界に赤い色。黒味掛かった赤い色。僕の色。自然と笑みがこぼれて来る。僕は声を出して笑っている。時々行き交う薄汚れた白い服を来た白い人達。決して僕を見ようをしない白い人達。皆の白い服にも赤い染み。それを見て声を出して笑う僕。決して僕を見ようをしない白い人達。僕の足取りは自然と軽くなる。扉の中からサワサワと話し声。 そうして僕は諦めると言う事を知った。 |