どこでも無い場所で
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どこでも無い場所で、僕は自由。 ドアにはめ込まれた小さなすりガラスに映る小さな人の影。部屋の外を誰かが通る。 ミシミシと床がきしむ嫌な音。 聞きたく無い音が聞こえる。聞きたく無い声が聞こえる。いつも聞こえる。いつもいつも聞こえる。 本当に絶え間無く。 外から子供達の声。楽しそうな声。言葉にする事が出来ない位嫌な気持ちになる。 耳を手でぎゅうっとふさぐ。痛いほどふさぐ。汗ばんだ手の平とワンワンと空気が反響する音。 手の力を少しゆるめてみる。 そうしたら又、聞きたく無い音が聞こえる。聞きたく無い声が聞こえる。 聞こえなくても良い事は何一つとして聞こえない。 耳を手でぎゅうっとふさぐ。痛いほどふさぐ。汗ばんだ手の平とワンワンと空気が反響する音。 聞こえるのはそれだけ。 本当はかすかに嫌、十分聞き取れる程に聞きたく無い音と聞きたく無い声が聞こえるのだけれど聞こえない事にする。 聞きたく無い。聞きたく無い。聞きたく無い。 僕の場所。ここはどこでも無い場所で、僕は誰にも何にも縛られる事は無い。 ここは外とは関係の無い場所。僕一人の為だけの場所。 幸せに満ちた自由な場所。幸せな時間だけが静かに静かに過ぎてゆく。 これからどうなるのだろう。とか、これまではどうだったのだろう。とか そんな事は考えない。 幸せに満ちた自由な場所。 そんな場所がどこにも存在しない事はとっくにわかっているはずなのにみっともない。本当にみっともなくて。 でも考えない。そんな事は考えない。考えないように努力する。考えない。考えない。考えない。 僕の時間が完全に止まる日まで僕は努力をし続ける。 僕の時間が完全に止まる日。 その時、本当に、 どこでも無い場所で、僕は自由。 |