禁断の果実
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それには決して触れてはいけないの。この世に産まれ落ちた瞬間聞かされた言葉。 それは、一体誰から聞かされた言葉だったのだろう。 それは、手を伸ばせば、すぐそこにある。軟らかそうで優しくて。そうしてとてもとても綺麗。 それは、私達とは全くの正反対。 それに触れたらどんな気持ちになるのだろう。 嬉しい気持ち? 楽しい気持ち? 優しい気持ち? 幸せな気持ち? 嬉しい。楽しい。優しい。幸せ。それは一体どういう気持ち? そうしてそれを口に含んだら。一体どんな味がするんだろう。甘いのだろうか。いや、きっと甘い。 甘い。それは一体どんな味? ここは漆黒の闇の世界。 でも、世界って一体何だろう? 真っ暗闇の中、金にピカピカ光るたわわに実った沢山の小さな実。実。実。実。実。実。 ガサガサガサガサガサガサと地面を這いずり回る私達。沢山の沢山の沢山の沢山の沢山の沢山の足をせわしなく動かして。 ガサガサガサガサガサガサ。ガサガサガサガサガサガサ。ガサガサガサガサガサガサ。 金色にピカピカ光る実の一つがユサユサと揺れる。 誰かが金色にピカピカ光る実を摘み取ろうとしている。 私じゃない誰かが金色にピカピカ光る実を摘み取ろうとしている。 皆の足音がピタリと止まる。 皆の視線がユサユサと揺れる実に釘付けになる。 私の視線がユサユサ揺れる実に釘付けになる。 金色の光が暗闇に吸い込まれた瞬間、 |