INDEX BACK
冷たく乾いた手
 暑いね。暑いね。暑いね。今日は本当に暑いね。こんなに暑い日は久し振りだね。
 ここは暗くて涼しくて、チョッピリ湿っぽいのが気に入っているんだれど。
 聞こえてる?ねぇ?聞こえてる?
 ………………。
 ねぇ、聞・こ・え・て・る?
 (まぁ、聞こえていなくても良いんだけどね。本当は)
 君の手をそっとぎゅっと握る。
 冷たいね。冷たいね。冷たいね。君の手は冷たいね。
 そうして堅くて軽くて砕けそう。
 いつからそうだったのかな。
 いつからそうだったのかな。
 いつからそうだったのかな。
 前はそうじゃあ無かったように記憶しているんだけれど。
 聞こえてる?ねぇ?聞こえてる?
 ………………。
 ねぇ、聞・こ・え・て・る?
 (まぁ、聞こえていなくても良いんだけどね。本当は)
 軽い音を立てて君の手が少し砕けた。
 ああ。力が入ってしまった。治すのが手間だね。ほら、僕は不器用だから。
 ………………。
 笑ってくれないんだね。
 少しも笑ってくれないんだね。
 でも、許してくれるよね?君は優しいから。ずっと前から優しかったから。
 優しかったから。
 優しかったからね。
 軽い音を立てて君の手が又少し砕けた。
 優しかったのに。
 優しかったのに。
 優しかったのにね。
 君の欠片を一つ残らず拾い集める。結構砕けたね。思ったより砕けたね。治すのが大変だね。
 たまには君も君を治すのを手伝ってくれたら良いのに。
 なんて言ったらて自分勝手か。
 ほら。さあこれで全部。綺麗だね。君の欠片は全部綺麗だね。
 ねぇ、聞こえてる?
 ねぇ、ねぇ、ねえ。
トラベルミン