虚無の国のアリス
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目が覚めるとそこは暗闇? 恐る恐る起き上がる。恐る恐る手を伸ばす。何も無い。少なくとも今は。 全くの真っ暗闇。いつどこで誰が……何をした? 彼は考える。考える。考える。何も分からない。 何気なくポケットに手を入れる。いつもの? 煙草とライター。恐る恐るライターの火を点す。唯一の明かり。 ――何も無い。 本当に全く何も無い。それ以外に表現のしようが無い。 ライターの火を消してポケットに戻す。 頭を整理する。思い出す。思い出す。思い出す。何も思い出せない。今はいつか。ここはどこか。自分は誰か。何も分からない。 思い出そうとする。今はいつか。ここはどこか。自分は誰か。どれから思い出そうか考える。一番重要なのはどれか。優先順位を考える。 どこかで奇妙な祈りの声が聞こえる。 ぺちゃ。 少し離れた場所で何か、とても柔らかな物が地面に落ちる音がする。 ぺちゃぺちゃぺちぺちゃ。 どんどんどんどん落ちて来る。落ちてくる。落ちてくる。 ぺちゃり。 ――そんな事、どうでも良いじゃ無いか。どうだって良いじゃないか。 ■■が言う通り僕と■■しか、存在しない世界にしたよ。これで良いんだよね。 どこかで奇妙な祈りの声が聞こえる。 今はいつか。ここはどこか。自分は誰か。何も分からない。分かっても多分(絶対)仕方が無い。多分自分は取り返しの付かない事になっている。 彼? がそう言うのだからそうなのだろう。 狂う事も出来ない。 |